今まで他ホームページに少し書いていた数学ネタですが,1つこちらのブログへ移植します。2つの円の共通接線の話です。
xy平面上にある2つの異なる円
の共通接線を求めてみましょう。
このまま計算すると文字が多く大変なので, の中心を原点へ移すように両方の円を
軸方向に
,
軸方向に
だけ平行移動させたものを考えます。
とおいて,2つの円
の共通接線を求めてみましょう。
共通接線を求める
円 の周上の点
を任意にとり,その点における
の接線を
とします。
点 は
上の点なので
が成り立ちます。
また,接線 の方程式は
となります。
が円
に接するとき,
の中心と直線
との距離は
となるので
すなわち
が成り立つはずです。
以上より,
の2式を連立させれば,共通接線の との接点
が座標で求まりそうです。
これを解くと(過程は省略します),
のとき
のとき
となります。なお,それぞれの場合で複号同順です。
これら0~4つの解を直線 の方程式
に代入することで,
と
の共通接線の方程式が得られます。
"0~4つ"というのは,根号の中の値の符号によって共通接線が存在しない場合や,存在しても4本に満たない場合があるからです。「2つの円の位置関係」と呼ばれているものですね。
これを元の位置へ再度平行移動することで と
の共通接線が求まります。
つまり,得られた点や直線を 軸方向に
,
軸方向に
だけ平行移動することで,2円
の共通接線が得られるわけです。
したがって,と共通接線の接点の座標は
(
は上の式で得られる値)であり,
と
の共通接線の方程式は
となります。やったー!
共通内接線と共通外接線
と,求めるだけならここで終了ですが,ここで疑問が残ります。
2つの円の共通接線には,共通内接線と共通外接線の2種類があります。
2円の中心が直線を挟んでそれぞれ逆の領域にあるようなものが共通内接線です*1。そして2円の中心が直線に関して同じ側にあるようなものが共通外接線です*2。
先ほど高々4つの接点が求まりましたが,一体どれが共通内接線の接点であり,共通外接線の接点なのでしょうか。
ここから先は平行移動した円 と
で考えます。
上の図は,2円 と
とその共通接線の一例を図示したものです。
左下の円が ,右上の円が
です。
以降,連立方程式 において
として得られた2つの解を以下のように
とおき,これらの点における接線をそれぞれ
とします。
また, のときの2つの解を以下のように
とおき,これらの点における接線をそれぞれ
とします。
このとき, と
は2円の共通内接線になり,
と
は共通外接線になります。
それを確かめてみましょう。
まず,2本の接線 と
の方程式を連立して
について解き,交点の座標を求めてみます。
と
の方程式を連立したものは,行列を用いて
と表すことができます。ただし,
とおきました。
これをクラメルの公式を利用して について解くと,
となり, と
の交点の座標が
であることが分かりました。
この結果を見て分かるとおり,交点の座標は と
それぞれの中心を結ぶ線分を
に内分した点となりました*3。
よってこの点は と
の中心を結ぶ線分上にあることが分かり,したがって
と
は共に共通内接線となります。
なお,上の式において となるのは
のときですから,このとき三平方の定理より2円は外接しています。(下図参照)
2円が外接しているとき,共通内接線は1本しか存在しないはずです。
実際, が成り立つときは
の根号の中が
になるので,
となります。したがって
と
は同じ接線を表すことになり,共通内接線がただ1本に決まるわけですね。
また,このとき2円の接する点の座標は先ほどと同じく になりますが,この点は共通内接線の唯一の接点ですからこれは
および
と等しいのです。
共通外接線については結論のみ書きます。
は共に共通外接線となり,交点の座標は
と表されます。
この点は と
の中心を
に外分した点になっています。
のとき2円は内接し,共通外接線は1本になります。
また, のとき
は平行です。
[追記]
点と直線の距離の公式を用いた式 から共通内接線・共通外接線の区別ができることがわかりました。
絶対値の中身の値の符号は,直線から見て円 の中心
が直線の法線ベクトル
の向く方向にあるときに正,法線ベクトルと反対の向きにあるときに負になります。
円 の中心は共通内接線から見て
の向く方向にあるので,
のときに得られる直線は共通内接線です。
また,円 の中心は共通外接線から見て
の向く方向と逆の位置にあるので,
のときに得られる直線は共通外接線になります。
(追記おわり)
ここで一段落です。今度は2本の共通接線の位置関係について考えてみます。
共通接線の位置関係
共通内接線が2本存在するとき, と
はそれぞれどちら側の直線を表すのでしょうか?
つまり,"◯/◯","◯\◯" というように円と共通内接線があったとき, と
はそれぞれ / と \ のどちらの直線を表すものかどうかを考えましょう。
これは に含まれる根号の前の
の符号によって次のように確定します。*4
説明のために,2円 がちょうど上下に並んでいるとします。どちらが上でも構いません。
このとき, の計算式中の複号
がプラス(
)のときの接線
は左上から右下への直線,マイナス(
)のときの接線
は右上から左下への直線になります。
[図 1] の添え字が正しい位置関係を表しています。円が上下に並んでいるときは"\"という向きの接線が で,"/"という向きの接線が
となります。
この位置関係は円の位置を連続的に移動させても変化しません。すなわち,連続的に円を移動させていく中で突然 と
の位置関係がひっくり返ったりすることはありません。
ゆえに,円が左右に並んでいるときは, は "◯/◯" という向きの接線を表し,
は "◯\◯"という向きの接線を表します。
次は共通外接線の位置関係です。
が下,
が上になるように2円が上下に並んでいるとします。
このとき の
がプラス(
)のとき接線
は右側の直線,マイナス(
)のとき接線
は左側の直線になります。
こちらも円の連続的な移動によって位置関係が突然ひっくり返ることはありません。なお,円の位置を上下にひっくり返すと見かけ上 と
が入れ替わったように見えることに注意してください。
もう1つの接点
もう1つ調べてみましょう。
と接線
の接点は
でしたが, このときの
と接線
の接点の座標を求めてみましょう。
これは,図形の相似に着目することで簡単に得られます。
まずは共通内接線を考えましょう。
下の [図 3] のように共通内接線と との接点をそれぞれ
とし,円
の中心を
,点
から線分
へ引いた垂線の足をそれぞれ
とします。
このとき と
は相似であり,その相似比は
です。
したがって が成り立ちます。
点 の座標は
ですから,
と接線
の接点
の座標は
とわかります。
続いて共通外接線です。
こちらも同じように図形をかくと相似比は で,ベクトルの向きは反転せずにそのままになります。
よって と接線の接点の座標は
となります。
まとめ
ここまでは で考えてきましたが,最後にこれを
に関する結果としてまとめます。
2つの異なる円
の共通内接線を ,共通外接線を
とすると,
と
の接点は
で,
と
の接点は
です。
また, と
の接点は
で,
と
の接点は
です。ただし
とおき,さらに
とおきました。これらはそれぞれ複号同順であり,複号が の場合と
の場合で
と
はそれぞれ高々2本ずつあります。
また,接線 ,
の方程式はそれぞれ
と表されます。
が2本存在するとき,その交点の座標は
であり, が2本存在するとき,その交点の座標は
です。
以下はおまけです。
[2019/02/08] 一部記述を修正しました。
[2021/02/02] 一部記述を修正しました。